看護師として働く中で、夜勤による身体的・精神的な負担を感じている方は多いのではないでしょうか。ワークライフバランスを考えて夜勤なしでの勤務を検討されている方も、収入面での不安があると思います。
看護師が夜勤なしで働く場合、具体的にどのくらいの年収になるのでしょうか。また、夜勤手当がなくなることで、現在の収入とどれくらいの差が出るのでしょうか。
私は総合病院で10年間看護師として勤務し、その後5年間にわたり看護師の転職支援に携わってきました。年間100名以上の看護師さんのキャリア相談に応じる中で、夜勤に関する相談は特に多くいただいてきました。
この記事では、夜勤なしで働く看護師の具体的な年収データと職場の選択肢について、実際の数字とともにご説明します。
▼この記事でわかること
- 夜勤なし看護師の具体的な年収
- 夜勤ありとの年収差
- 夜勤なしで働ける職場の種類
- 職場別の給与体系と待遇
1.夜勤なし看護師の年収データと職場選択肢
1-1.夜勤なし看護師の具体的な年収
夜勤なしで働く看護師の年収は、平均で約450万円となっています。これは日勤のみで働く場合の基本給と、各種手当や賞与を含めた金額です。
年齢や経験年数によって具体的な年収は変わってきますが、20代後半から30代前半の場合、基本給は月給22万円~25万円程度となるのが一般的です。
これに各種手当や賞与を加えると、おおよそ以下のような年収となります。
- 新卒~3年目:350万円~400万円
- 4年目~7年目:400万円~450万円
- 8年目以上:450万円~500万円
これらは日勤のみで働く場合の基本給と、各種手当や賞与を含めた金額です。
20代後半から30代前半の場合、基本給は月給22万円~25万円程度となるのが一般的です。
1-2.夜勤ありとの年収差
夜勤ありの看護師と比較すると、年収には約100万円の差が生じます。これは主に夜勤手当の有無による違いです。
夜勤の有無による年収比較 | ||
---|---|---|
夜勤あり | 夜勤なし | |
基本給(月額) 夜勤手当(月額) その他手当(月額) 賞与(年間) |
25-28万円 4-6万円 2-3万円 4.5ヶ月分 |
22-25万円 なし 2-3万円 4.0ヶ月分 |
年収 | 約550万円 | 約450万円 |
日本看護協会の2023年の調査によると、二交代制の夜勤手当は1回あたり平均11,368円で、月に4.9回の夜勤を行うと年間で約66.8万円の収入増加となります。
三交代制の場合も、準夜勤と深夜勤を合わせると年間で約42万円の収入増加が見込まれます。
このように、夜勤手当は看護師の収入に大きく影響します。しかし、夜勤なしの職場でも、以下のような手当で収入を補うことができます。
- 資格手当
※認定看護師や専門看護師の資格取得で付与 - 職務手当
※役職や担当業務に応じて付与 - 業務手当
※特定の業務や責任に対して付与 - 家族手当
※配偶者や扶養家族がいる場合に付与
1-3.夜勤なしで働ける職場一覧
夜勤なしで働ける職場は、以前に比べてかなり増えています。私が転職支援をする中で、特に人気が高く、実際に多くの看護師さんが転職されている職場をご紹介します。
- クリニック
- 企業内健康管理室
- 訪問看護ステーション
- 健診センター
- 保育園・学校
それぞれの職場について、具体的な仕事内容や特徴を見ていきましょう。
【クリニック】
外来診療がメインで、多くの場合9時から18時までの勤務となります。診療科目によって業務内容は異なりますが、採血や処置、医師の診察補助などが主な仕事です。患者さんとじっくり向き合える環境が特徴です。
【企業内健康管理室】
社員の健康管理や保健指導が主な仕事となります。定期健康診断の実施・管理や、メンタルヘルスケアなども担当します。土日祝日が休みで、祝日の振替出勤もないため、プライベートの予定が立てやすい環境です。
【訪問看護ステーション】
利用者様のご自宅を訪問して看護ケアを提供します。日中の訪問がメインですが、必要に応じてオンコール対応が必要な場合もあります。一人ひとりの生活に寄り添ったケアができ、看護の専門性を高められる環境です。
【健診センター】
健康診断の実施や保健指導が主な業務となります。土日祝日が基本的に休みで、年間の休日数も多いのが特徴です。また、突発的な対応が少なく、計画的に仕事を進められます。
【保育園や学校】
園児や生徒の健康管理、応急処置、保健指導などを担当します。夏休みなどの長期休暇もあり、子育て中の看護師さんにも人気の職場です。
1-4.職場別の給与体系と待遇
それぞれの職場によって、給与体系や待遇には特徴があります。実際の転職支援の経験から、職場ごとの一般的な待遇についてお伝えします。
【クリニック】
基本給に加えて、職務手当や皆勤手当などが設定されていることが多いです。残業は比較的少なめですが、昼休憩の時間が短く設定されている場合もあります。年間休日は110日~120日程度で、有給休暇は取得しやすい環境が多いです。
【企業内健康管理室】
大手企業であれば総合職と同等の待遇を受けられることも。福利厚生が充実している点も魅力です。年間休日は120日以上と多く、産休・育休の取得実績も豊富です。
【訪問看護ステーション】
訪問件数に応じたインセンティブ制度を設けているところも。また、車両手当や移動手当など、訪問にかかる経費の補助も充実しています。土日祝日が休みのところが多く、年間休日は110日~120日程度です。
【健診センター】
基本給に加えて資格手当や検査手当などが設定されています。残業は少なく、年間休日も120日前後と多めです。また、福利厚生も充実していることが多く、退職金制度を設けている施設も多くあります。
【保育園や学校】
公立と私立で待遇に差があります。公立の場合は公務員としての待遇となり、安定した給与と手厚い福利厚生を受けられます。私立の場合は施設によって待遇に差がありますが、長期休暇がしっかりと取れる点は共通しています。
2.夜勤なしで働くメリット・デメリット
ここまで、夜勤なしの職場における収入面や働き方について見てきました。次は、夜勤なしで働くことのメリットとデメリットについて、私が転職支援をしてきた中で実際に看護師さんから多く聞かれた声をもとにお伝えします。
2-1.メリット3つ
夜勤なしで働くことの最大のメリットは、生活リズムが整いやすいことです。看護師として10年間働いてきた私自身の経験からも、夜勤がないことで心身ともに安定した状態を保ちやすくなります。
1つ目は、睡眠の質が改善されることです。日中に働き、夜はしっかり休むという自然な生活リズムを保てるため、睡眠の質が向上します。実際に夜勤なし職場に転職された方からは、「慢性的な疲れが取れた」「肌の調子が良くなった」という声を多くいただいています。
2つ目は、家族との時間が確保しやすいことです。夜勤があると、家族と過ごす時間が不規則になりがちです。特に子育て中の看護師さんにとって、子どもの行事や家族の予定に合わせやすくなることは大きなメリットとなります。
3つ目は、専門性を高める時間が作りやすいことです。規則正しい生活リズムの中で、資格取得の勉強や新しいスキルの習得に時間を使えます。転職支援をする中でも、夜勤なし職場に移ってから認定看護師の資格を取得された方は少なくありません。
2-2.デメリット2つ
一方で、夜勤なしで働くことには課題もあります。転職前に知っておくべき主なデメリットを2つご説明します。
1つ目は、収入面での調整が必要になることです。先にご説明した通り、夜勤手当がなくなることで年収は一般的に100万円程度下がります。ただし、これは職場や条件によって大きく異なりますので、一概に「収入が下がる」とは言えません。
2つ目は、急性期医療の経験を積みにくくなることです。夜勤のある病棟では、緊急時の対応や重症患者のケアなど、より専門的な看護経験を積める機会が多くあります。夜勤なしの職場ではそういった経験を積む機会が限られる可能性があります。
2-3.デメリットを克服するための対策
これらのデメリットは、適切な対策を取ることで十分に克服することができます。私の転職支援の経験から、効果的な対策をご紹介します。
収入面については、資格取得やスキルアップによって補うことができます。例えば、認定看護師の資格を取得することで資格手当が付き、夜勤手当がない分を補える可能性があります。また、訪問看護ステーションであれば、訪問件数に応じたインセンティブ制度を活用することで収入アップを図ることもできます。
急性期医療の経験については、日勤帯でも救急外来や外来診療など、専門性の高い部署で働くことで補えます。また、看護協会などが主催する研修に参加することで、新しい知識やスキルを習得することもできます。
実際に、夜勤なし職場へ転職された看護師さんの多くは、最初は不安を感じながらも、こういった対策を取ることで充実したキャリアを築いています。次の章では、そんな夜勤なしで働く看護師さんのキャリアプランについて、具体的にご説明していきます。
3.夜勤なしで働く看護師のキャリアプラン
夜勤なしで働くことを選んでも、看護師としてのキャリアアップの可能性は十分にあります。むしろ、生活リズムが整うことで、計画的なキャリア形成がしやすくなる面もあります。
3-1.夜勤なし職場でのキャリアアップ方法
夜勤なし職場でのキャリアアップは、主に「役職」「専門性」「資格」の3つの方向性があります。私が支援してきた看護師さんの多くは、この中から自分に合った方向性を選んで着実にステップアップを果たしています。
まず役職面では、クリニックであれば看護主任から看護部長へ、企業内健康管理室であれば統括保健師へと昇進していく道があります。日勤のみの勤務だからこそ、マネジメントにじっくり時間を使えることも特徴です。
一般的な昇進モデルとしては、入職後3~5年で主任クラス、5~7年で係長クラス、10年以上で部長クラスとなっていきます。もちろん、これは施設の規模や体制によって変わってきます。
3-2.スキルアップの機会と専門性の向上
夜勤なし職場でも、専門性を高めるための機会は数多くあります。むしろ、時間的な余裕があることで、より計画的なスキルアップが可能です。
例えば訪問看護ステーションでは、在宅医療の専門性を高めることができます。医療依存度の高い利用者様のケアや、ターミナルケアなど、高度な看護スキルが求められる場面も多くあります。
また、健診センターでは保健指導のスペシャリストとして、企業内健康管理室では産業保健の専門家として、それぞれのフィールドで専門性を磨くことができます。
実際に夜勤なし職場でスキルアップを果たした方の例をご紹介します。
私が支援した30代の看護師さんは、総合病院から企業内健康管理室に転職後、産業保健師の資格を取得。さらに心理カウンセラーの資格も取得し、メンタルヘルスケアの専門家として活躍されています。生活リズムが整ったことで、仕事と学習の両立がしやすくなったとおっしゃっていました。
3-3.将来的な年収アップの可能性
夜勤なし職場でも、キャリアアップに応じて年収を上げていくことは十分に可能です。特に、専門性を高めることで収入アップにつながるケースが多くあります。
例えば、認定看護師の資格を取得すると月額2~5万円の資格手当が付くことが一般的です。また、訪問看護ステーションでは、経験を積んで利用者様を任されるようになると、訪問件数に応じた報酬が増えていきます。
役職に就くことでも収入は大きく変わります。クリニックの看護部長クラスであれば年収600万円以上、大手企業の統括産業保健師となれば年収700万円以上も十分に可能です。
このように、夜勤手当がなくても、専門性の向上や役職への昇進によって、むしろ夜勤ありの職場以上の年収を得ている看護師さんも少なくありません。重要なのは、自分の目指すキャリアの方向性を明確にし、計画的にステップアップしていくことです。
4.夜勤なし看護師として働くための具体的なステップ
夜勤なし職場での将来的なキャリアプランをご説明してきましたが、ここからは実際に夜勤なし看護師として働き始めるための具体的な方法をお伝えします。年間100名以上の看護師さんの転職支援をしてきた経験から、特に成功率の高い方法をご紹介します。
4-1.転職活動の進め方
夜勤なし職場への転職は、準備から内定獲得まで通常2~3ヶ月程度かかります。焦らず計画的に進めることが大切です。
転職活動は以下のステップで進めていきます。
- 【Step1】希望条件の整理
- 【Step2】求人情報の収集
- 【Step3】転職エージェントへの登録
- 【Step4】書類選考への応募
- 【Step5】面接対策の準備
まず第1ステップとして、自分の希望する働き方を具体的に考えましょう。
通勤時間はどのくらいまでなら許容できるか、給与の希望最低ラインはいくらか、土日祝日の勤務は可能か、といった具体的な条件を整理します。これにより、求人を探す際の基準が明確になります。
求人を探す方法としては、看護師専門の転職サイトや転職エージェントの利用がおすすめです。
特に転職エージェントは、非公開求人の紹介や条件交渉のサポートを受けられるため、夜勤なし職場への転職では大きな味方となります。
また、複数の転職エージェントを併用することで、より多くの求人情報にアクセスできます。ただし、3社以上に登録すると情報の管理が難しくなるため、2社程度での活用をおすすめします。
4-2.面接での志望動機の伝え方
夜勤なし職場への転職で最も重要なのが、面接での志望動機の伝え方です。単に「夜勤がきつくなったから」という理由では、前向きな印象を与えることができません。
私が支援してきた中で、面接で高評価を得られた志望動機の例をご紹介します。
【有効な伝え方の例】
「これまでの急性期病棟での経験を活かしながら、外来での患者さんとのコミュニケーションをより大切にした看護を実践したいと考えています。日勤業務に専念することで、患者さんお一人おひとりにしっかりと向き合い、より質の高い看護を提供していきたいと思います」
このように、夜勤がない環境で「何を実現したいのか」という前向きな目標を示すことで、面接官に好印象を与えることができます。実際に、このような志望動機で内定を獲得された方は数多くいらっしゃいます。
実際に夜勤なし職場への転職を成功させた方々の例をご紹介します。
【クリニックへ転職されたAさんの場合】
大学病院の救急外来で6年間勤務されていた30代前半の看護師さんは、結婚を機に夜勤なしのクリニックへ転職されました。
面接では「救急外来で培った迅速な判断力と処置スキルを、クリニックでの急変対応に活かしたい」という志望動機を伝え、即日内定をいただきました。
現在は皮膚科クリニックの看護主任として、後輩の指導も担当されています。
【企業内健康管理室へ転職されたBさんの場合】
総合病院の混合病棟で8年間勤務されていた30代後半の看護師さんは、小学生のお子様の学校行事に参加できる時間を増やしたいと考え、企業内健康管理室への転職を決意されました。
面接では「病棟での経験を活かし、予防医療の視点から社員さんの健康管理に貢献したい」という思いを伝えられました。
現在は大手IT企業の健康管理室で、産業保健師の資格も取得され、メンタルヘルスケアの分野でも活躍されています。
これらの事例からも分かる通り、あなたのこれまでの経験は、必ず夜勤なし職場でも活かすことができます。ポイントは、その経験をどのように活かしていきたいのかを、具体的に伝えることです。
4-3.条件交渉のポイント
面接を通過した後の条件交渉も、夜勤なし職場への転職では重要なステップとなります。夜勤手当がなくなる分、基本給や各種手当でどのように補えるかを具体的に確認していく必要があります。
条件交渉で最も大切なのは、あらかじめ譲れる条件と譲れない条件を明確にしておくことです。例えば、基本給は希望より低くても、土日祝日が確実に休めることを重視する、といった具合です。優先順位を決めておくことで、スムーズな交渉が可能になります。
具体的な交渉のタイミングは、内定をいただいた後が最適です。その際は、現在の給与明細を用意し、手取り額がどのように変化するのかを細かく確認することをおすすめします。
また、入職後の昇給や賞与の条件、各種手当の詳細についても必ず確認しましょう。特に、資格手当や職務手当など、将来的な収入アップにつながる制度があるかどうかは重要なポイントとなります。
おわりに
夜勤なしでの勤務は、確かに収入面では夜勤手当分の減少が避けられません。しかし、生活リズムが整い、心身ともに健康的に働き続けられる環境は、看護師としてのキャリアを長く続けていく上で大きな魅力となります。
また、この記事でご説明してきた通り、専門性の向上や役職への昇進など、様々なキャリアアップの可能性が開かれています。適切な職場選びと計画的なキャリア形成によって、充実した看護師人生を送ることは十分に可能です。
私は看護師として10年、転職支援の専門家として5年の経験を重ねてきました。その中で、夜勤なし職場への転職を決意し、イキイキと働き続けている看護師さんを数多く見てきました。
もし今、夜勤との両立に悩みを感じているのであれば、夜勤なしという選択肢を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。あなたらしい働き方で、看護師としての経験を活かせる場所は必ずあるはずです。
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