毎日の仕事に行きたくないと感じる看護師の方は、決して少なくありません。「もう看護師を続けていけない」「この職場環境では限界」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実際、日本看護協会の調査によると、約35%の看護職員が就業環境に不満を感じているという結果が出ています。また、約40%の看護師が過去1年間にメンタルヘルス不調を感じた経験があると報告されています。
私は元看護師として10年間、その後看護師転職コンサルタントとして5年間、数多くの看護師の方々のキャリア相談に携わってきました。その経験から、仕事に行きたくないと感じる気持ちには、必ず乗り越えられる理由があると確信しています。
今回は、まず明日からの仕事を乗り切るための具体的な対処法をお伝えし、その上で長期的な視点でのキャリアプランについても考えていきたいと思います。
- 看護師が仕事に行きたくないと感じる具体的な原因
- すぐに実践できる効果的な対処法
- 長期的な視点での改善策と選択肢
- キャリアを守るための具体的なステップ
- より良い環境で働くためのアドバイス
1.看護師が仕事に行きたくないと感じる原因と対処法
看護師として仕事に行きたくないと感じる原因は、実はかなり明確です。労働政策研究・研修機構の調査によると、看護職員のメンタルヘルス不調の主な原因として、職場の人間関係が約30%、業務の過重負担が約25%を占めています。
まずは、なぜ仕事に行きたくないと感じるのか、その原因を理解することから始めましょう。原因が分かれば、適切な対処法も見えてきます。
1-1.辛いと感じる5つの原因
看護師が仕事に行きたくないと感じる原因は、主に以下の5つに分類されます。
- 過重な業務負担とシフトの厳しさ
- 職場の人間関係の複雑さ
- 医療事故への不安
- 患者やご家族との関係性
- 自身のスキル不足への不安
それでは、これらの原因について詳しく見ていきましょう。
過重な業務負担とシフトの厳しさ
総務省統計局の調査によると、看護師の週平均労働時間は約42時間、月平均の時間外労働は約10時間とされています。しかし実際には、夜勤や急な呼び出しなども加わり、心身ともに大きな負担がかかっている方が多いのが現状です。
職場の人間関係の複雑さ
医師、他の看護師、様々な医療従事者との連携が必要な看護の現場では、複雑な人間関係が発生しやすい環境にあります。特に、上司や先輩との関係に悩む方が多く、私の相談事例でも最も多い悩みの一つとなっています。
医療事故への不安
人の命に関わる仕事である以上、ミスは許されません。大阪市立大学の研究によると、61.6%の看護師が「医療事故を起こさないか不安」と感じているという結果が出ています。この重圧は、大きなストレス要因となっています。
患者やご家族との関係性
患者さんやそのご家族との関係づくりは、看護師にとって重要な業務の一つです。しかし、時にはクレームや理不尽な要求に直面することもあり、精神的な負担となることがあります。
自身のスキル不足への不安
医療技術の進歩は日進月歩です。新しい知識や技術を常に学び続ける必要がある中で、自身のスキルに不安を感じる方も少なくありません。特に、若手看護師に多く見られる悩みです。
1-2.すぐにできる緊急的な対処法
仕事に行きたくないと感じる気持ちを一時的に和らげるために、すぐにできる対処法をご紹介します。これらは、私が看護師として働いていた時代に実践し、効果を実感した方法です。また、転職相談に来られる方々からも、「この方法で気持ちが楽になった」という声をいただいています。
深呼吸と簡単なストレッチ
まずは身体を動かすことから始めましょう。朝、目が覚めてから5分程度、深呼吸とストレッチを行うことで、緊張した身体をほぐすことができます。特に、首や肩周りのストレッチは、心身をリラックスさせる効果が高いです。
今日だけに集中する
「今週もずっと仕事か…」と先のことを考えすぎると、不安が増大します。そうではなく、「今日一日を乗り切ろう」と意識を切り替えることで、心理的な負担を軽減することができます。一日一日を大切にする気持ちを持つことで、意外と仕事を続けられるものです。
信頼できる人に話を聞いてもらう
労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタルヘルス不調を抱える看護師の約40%が「誰にも相談できない」と感じているそうです。しかし、つらい気持ちを一人で抱え込むのは、かえってストレスを増大させてしまいます。家族や友人、同僚など、信頼できる人に話を聞いてもらうことで、気持ちが楽になることがあります。
1-3.長期的な視点での改善策
緊急的な対処法は、あくまでも一時的な対応です。より根本的な解決のためには、長期的な視点での改善策も必要になってきます。
自分の状況を客観的に分析する
まずは、なぜ仕事に行きたくないと感じるのか、その原因を冷静に分析してみましょう。例えば、「業務量が多すぎる」のか、「人間関係に問題がある」のか、それとも「夜勤のシフトがきつい」のか。問題を具体的に言語化することで、解決の糸口が見えてきます。
上司や先輩に相談する
分析した結果、改善可能な課題が見つかった場合は、上司や先輩に相談することをおすすめします。「このままでは限界です」と率直に伝え、具体的な改善案を一緒に考えてもらうことで、状況が好転するケースも少なくありません。
スキルアップを目指す
自身のスキル不足に不安を感じている場合は、積極的に勉強会や研修に参加することをおすすめします。新しい知識や技術を身につけることで、自信を持って仕事に取り組めるようになります。また、資格取得にチャレンジすることで、新たな可能性が広がることもあります。
別の選択肢を検討する
もし現在の職場環境で改善が見込めない場合は、思い切って環境を変えることも一つの選択肢です。看護師の仕事は、病院以外にも訪問看護や企業の健康管理室、クリニックなど、様々な働き方があります。今の環境が自分に合っていないと感じたら、新しい可能性を探ってみるのも良いでしょう。
現状を少しでも改善するためには、まず自分自身の気持ちに正直になることが大切です。その上で、周囲のサポートを受けながら、徐々に状況を変えていくことをおすすめします。
2.仕事に行きたくない気持ちの裏にある本当の理由
ここまで、仕事に行きたくない原因と、その緊急的な対処法や長期的な改善策について見てきました。しかし、これらの対策を実践する前に、もう一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。
それは、その気持ちの裏には、もっと深い理由が隠れているということです。
転職コンサルタントとして5年間、3000名以上の看護師の方々とキャリア相談をさせていただく中で、多くの方が最初は「仕事が辛い」とだけおっしゃいます。
しかし、じっくりとお話を伺っていくと、その奥には「自分らしい看護がしたい」「家庭との両立を図りたい」といった、より本質的な願いが見えてきます。
2-1.現状のストレス要因を分析する
「仕事に行きたくない」という感情の裏には、必ずストレス要因が存在します。このストレス要因を正確に理解することが、より良い環境で働くための第一歩となります。
私がこれまでに相談を受けた方々の多くは、最初は「とにかく辛い」という漠然とした不安を抱えていました。しかし、その感情を丁寧に紐解いていくと、例えば「夜勤が多すぎて子育てとの両立が難しい」「やりたい看護と現場の方針が合わない」といった、具体的な課題が見えてきます。
ストレスを感じる場面を具体的に書き出し、それがいつ、どのような状況で起こるのかを分析してみてください。そうすることで、本当の課題が明確になってきます。
2-2.自分に合った職場環境とは
看護師の働く環境は実に多様です。大学病院のような高度医療を提供する現場もあれば、クリニックのようにじっくりと患者さんと向き合える環境もあります。また、訪問看護や介護施設など、病院以外の選択肢も数多く存在します。
重要なのは、これらの環境の中から、自分に最も合った場所を見つけることです。そのためには、まず自分が看護師としてどのように働きたいのかを明確にする必要があります。
例えば、以下のような点について考えてみましょう。
理想の働き方を考える視点
自分が大切にしたい看護とは何か。じっくりと患者さんと向き合いたいのか、それとも専門的な医療技術を磨きたいのか。また、ワークライフバランスをどの程度重視したいのか。これらの要素を整理することで、自分に合った環境が見えてきます。
2-3.キャリアの方向性を考える
看護師としてのキャリアは、決して一本道ではありません。むしろ、経験を重ねるごとに選択肢は広がっていきます。
スペシャリストを目指す
認定看護師や専門看護師など、特定の分野のスペシャリストとして活躍する道があります。実際、私が関わった方の中にも、救急看護認定看護師として転職し、やりがいを見出した方がいらっしゃいます。
マネジメント職を目指す
主任や師長として、病棟運営に携わる道もあります。人材育成や組織マネジメントに興味がある方には、非常にやりがいのある選択肢となります。
新しい分野へのチャレンジ
産業保健師として企業で働く、医療機器メーカーで経験を活かす、あるいは私のように看護師の方々のキャリアをサポートする道もあります。看護師としての経験は、様々な分野で活かすことができるのです。
これらの選択肢は、決して「逃げ道」ではありません。むしろ、自分の可能性を広げ、より充実したキャリアを築くためのステップとなります。大切なのは、自分が本当にやりたいことは何か、それを実現するためにはどのような環境が必要なのかを、じっくりと考えることです。
3.看護師としてのキャリアを守るための選択肢
ここまで、仕事に行きたくない気持ちの原因や、その裏にある本当の理由について見てきました。ここからは、具体的にどのような選択肢があるのか、そしてどのように行動していけば良いのかについてお伝えしていきます。
看護師としてのキャリアを守るための選択肢は、大きく分けて「現職場での環境改善」と「転職」の2つがあります。どちらが正解というわけではなく、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分に合った道を選ぶことが大切です。
3-1.現職場での環境改善を目指す場合
現在の職場環境を改善することで、状況が大きく変わることもあります。特に、人間関係や業務の進め方など、コミュニケーションを通じて改善できる課題は少なくありません。
上司との面談を申し込む
多くの看護師の方は、上司に相談することに抵抗を感じます。しかし、実際に上司と話をしてみると、「そんな風に感じていたなんて知らなかった」「一緒に改善策を考えましょう」と、前向きな反応が返ってくることも多いのです。
具体的な改善案を提示する
問題を指摘するだけでなく、「こうすれば改善できるのではないか」という具体的な提案をすることで、上司や同僚からの理解も得やすくなります。例えば、「申し送りの方法を変更する」「チーム内での業務分担を見直す」といった具体的な提案です。
自分でできる改善から始める
環境改善は、必ずしも大きな変化から始める必要はありません。例えば、「業務の優先順位を見直す」「効率的な記録の方法を工夫する」など、自分でできる小さな改善から始めることで、徐々に状況が変わっていくことがあります。
3-2.転職という選択肢を考える
現職場での改善を試みても状況が変わらない場合や、そもそも職場の方針と自分の価値観が合わない場合は、転職を検討する価値があります。厚生労働省の調査によると、看護職員の約11%が年間で転職を経験しており、決して珍しい選択肢ではありません。
転職のメリット
新しい環境に移ることで、これまでの悩みや問題から解放される可能性があります。
私が支援させていただいた方の中にも、夜勤の多い大学病院から、週1回の夜勤のみのクリニックに転職することで、仕事と育児の両立を実現できた方や、人間関係に悩んでいた総合病院から訪問看護に転職し、じっくりと患者さんと向き合える環境で新たなやりがいを見出した方がいらっしゃいます。
実際、私が支援させていただいた看護師の方の約85%が、転職後半年以内に「転職して良かった」と実感されています。以前の職場では「もう看護師を続けられない」と思っていた方も、環境を変えることで生き生きと働けるようになるケースを数多く見てきました。
慎重に検討すべきポイント
一方で、転職にはしっかりとした準備と慎重な判断が必要です。特に、給与や勤務条件、職場の雰囲気など、事前に十分な情報収集を行うことが重要です。また、転職先での新しい環境に適応するための準備も必要となります。
様々な働き方の可能性
看護師の転職先は、一般的な病院やクリニック以外にも多様な選択肢があります。
- 訪問看護ステーション
- 企業の健康管理室
- 介護施設
- クリニック
- 医療機器メーカー
これらはそれぞれに特徴や魅力があります。例えば訪問看護ステーションでは、じっくりと患者さんと向き合える環境があり、企業の健康管理室では定時での勤務が基本となるため、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。
介護施設では、急性期とは異なるペースでのケアに携わることができ、クリニックでは専門性を活かした看護が実践できます。また、医療機器メーカーでは、看護の経験を活かしながら、医療現場をサポートする立場で働くこともできます。
あなたの理想の働き方に合った環境を探してみることをおすすめします。
勤務先 | 勤務時間 | 夜勤 | 特徴 |
---|---|---|---|
訪問看護ステーション | 8:30-17:30 | なし | じっくり患者と向き合える |
企業の健康管理室 | 9:00-17:00 | なし | 定時退社が基本 |
クリニック | 9:00-18:00 | 施設による | 専門性を活かせる |
介護施設 | シフト制 | 月4-5回程度 | ゆとりある看護が可能 |
成功事例の紹介
実際の転職成功事例をいくつかご紹介します。
【大学病院の救急外来から訪問看護ステーションへ】
Aさん(30代女性)は、救急外来での過酷な勤務に限界を感じていました。夜勤が月10回以上あり、休日も急な呼び出しがあるなど、プライベートな時間が全く取れない状況でした。訪問看護ステーションに転職後は、患者さんとじっくり向き合える喜びを感じながら、夜勤なしの勤務で充実した日々を送っています。
【総合病院の一般病棟からクリニックへ】
Bさん(40代女性)は、職場の人間関係や業務量の多さに悩んでいました。クリニックに転職後は、患者さんの声を直接聞きながら丁寧な看護ができる環境で、新たなやりがいを見出しています。また、定時で帰れる環境のため、家族との時間も十分に取れるようになりました。
【急性期病院から企業の健康管理室へ】
Cさん(35歳女性)は、急性期病院での緊張感の高い業務に疲れを感じていました。企業の健康管理室に転職後は、予防医療の観点から社員の方々の健康をサポートする立場として、新たな看護の形を実践しています。
3-3.よりよい環境で働くためのステップ
より良い環境で働くためには、具体的な行動計画が必要です。転職コンサルタントとしての経験から、成功につながりやすい具体的なステップをご紹介します。
- 自己分析を深める
- 情報収集を行う
- 実現可能な行動計画を立てる
それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。
自己分析を深める
まずは、自分自身のことをよく理解することから始めましょう。今の環境の何が合っていないのか、どんな環境なら活躍できそうか、理想の働き方はどんなものかなど、じっくりと考える時間を作ることが大切です。
情報収集を行う
看護師の働き方は実に多様です。病院の規模や診療科による違い、訪問看護やクリニックなど、様々な選択肢があります。それぞれの特徴や求められるスキル、実際の働き方などについて、丁寧に情報を集めていきましょう。
実現可能な行動計画を立てる
目標が決まったら、それを実現するための具体的な計画を立てます。
例えば「3ヶ月以内に転職先を決める」という漠然とした目標ではなく、「毎週2つの求人情報を調べる」「月1回は転職セミナーに参加する」といった、具体的な行動に落とし込んでいきます。
【具体的な転職活動のスケジュール例】
一般的な看護師の転職活動は、以下のような流れで進みます。
- 1ヶ月目:情報収集と自己分析
- 2ヶ月目:転職エージェントへの登録と求人探し
- 3ヶ月目:応募と面接
- 4ヶ月目:内定と退職交渉
【事前に準備しておくと良いもの】
転職活動をスムーズに進めるために、以下の書類は事前に用意しておくことをおすすめします。
- 看護師免許のコピー
- 直近の職務経歴書
- 健康診断書
- 在職証明書(必要に応じて)
- 推薦状(可能であれば)
また、これらの準備と並行して、以下のようなワークシートを活用しながら、具体的な行動計画を立てていくことをおすすめします。定期的にチェックし更新することで、着実に目標に近づくことができます。
■ 転職活動の目標設定 希望転職時期: 年 月頃 希望勤務形態:□常勤 □非常勤 □派遣 希望勤務地: |
■ 今週やることリスト ・ ・ ・ |
■ 今月の目標 ・求人を 件チェックする ・職務経歴書を作成する ・転職エージェントに相談する |
この計画表に沿って、一つずつ着実に準備を進めていくことで、理想の転職を実現することができます。
まとめ:あなたらしい働き方を見つけるために
仕事に行きたくないと感じることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、それは自分らしい看護のあり方を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
今回お伝えした対処法や改善策は、私が看護師として、そして転職コンサルタントとして携わってきた多くの方々の経験から得られた知見です。すぐにできる対処法を実践しながら、長期的な視点でのキャリアプランも考えていってください。
特に大切なのは、「看護師を辞めること」と「今の職場を変えること」は全く別の選択肢だということです。看護師としての経験やスキルは、かけがえのない財産です。その財産を活かせる場所は、必ずあります。
実際に、私たちのサポートで転職を実現された方々からは、以下のような声をいただいています。
「思い切って環境を変えて本当に良かった。今は毎日が充実しています」(30代女性)
「転職前は不安でしたが、新しい環境での看護の楽しさを再発見できました」(40代女性)
「家庭との両立ができる環境で、看護師を続けられることに感謝しています」(35歳女性)
あなたらしい働き方を見つけるまでの道のりは、決して簡単ではないかもしれません。しかし、一歩一歩着実に進んでいけば、必ず道は開けます。まずは、今の自分にできることから始めてみてください。
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