シングルマザーとして看護師を続けながら子育てをするのは、想像以上に大変なことです。私も看護師として10年間働く中で、多くのシングルマザーの看護師さんと出会い、その苦労を間近で見てきました。
夜勤のシフトと保育園の送り迎えの両立、子どもの急な体調不良での欠勤、職場の理解不足など、様々な課題に直面しながら、それでも看護師として働き続けたいと頑張っておられる姿に、いつも胸を打たれています。
しかし、環境を変えることで、子育てと看護師の仕事を無理なく両立できる可能性は十分にあります。実際に、私が転職エージェントとして支援させていただいた多くのシングルマザー看護師の方が、転職を通じてより働きやすい環境を手に入れています。
この記事では、シングルマザー看護師の転職について、具体的な方法から職場選びのポイント、実際の成功事例まで、詳しくご紹介していきます。
1.シングルマザー看護師の転職を成功させる具体的な方法と職場選び
シングルマザー看護師の転職で最も重要なのは、子育てと両立できる職場を見つけることです。ただし、両立できる職場といっても、その形は一つではありません。あなたの状況や希望に合わせて、様々な選択肢があります。
1-1.子育てと両立しやすい職場の種類と特徴
看護師として働ける職場は、実は想像以上に多様です。特に子育てと両立しやすい代表的な職場として、以下が挙げられます。
- クリニック(診療所)
- 訪問看護ステーション
- 企業の健康管理室
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
【クリニック(診療所)】
日勤のみで残業も少なく、子育て中の看護師さんに特に人気が高い職場です。一般的に外来診療の時間に合わせた勤務となるため、保育園の送り迎えがしやすいのが特徴です。
診療科目によって勤務時間は異なりますが、多くの場合、平日の9時から18時前後の勤務です。土曜日は半日勤務のところが多く、日曜・祝日は基本的に休みとなります。
ただし、総合病院と比べると基本給は若干低めになる傾向があります。その分、夜勤手当などがないため、年収としては下がる可能性があることは考慮しておく必要があります。
【訪問看護ステーション】
訪問看護も日勤中心で時間の融通が利きやすい職場として注目を集めています。訪問先のスケジュール調整が可能なため、子どもの学校行事などにも参加しやすい環境です。
また、看護師としての専門性を活かしながら、患者さんとじっくり向き合える点も魅力です。一人ひとりの生活に寄り添うケアを提供できるため、やりがいを感じやすい職場といえます。
【企業の健康管理室】
大手企業の社員の健康管理を担当する仕事です。土日祝日が確実に休めて、夜勤もないため、子育て中の看護師さんにとって理想的な環境といえます。
定期健康診断の実施や応急処置、メンタルヘルスケアなど、業務内容は多岐にわたります。病院とは異なる環境で看護師としてのスキルを活かせる点も魅力的です。
どの職場を選ぶにしても、面接では必ず以下の点を確認することをおすすめします。
- 両立支援制度の詳細(育児短時間勤務、子の看護休暇など)
- 急な休みへの対応
- 残業の頻度
- シフトの融通が利くか
- 職場の雰囲気(特に子育てへの理解)
これらの情報をもとに、ご自身の生活スタイルに合った職場を見極めていくことが、転職成功の第一歩となります。
1-2.転職エージェントの活用方法と成功のポイント
適切な職場を見つけるためには、転職エージェントの活用がとても効果的です。特にシングルマザーの看護師さんの場合、両立支援制度や職場環境など、確認すべきポイントが多いため、プロのサポートがあると心強いでしょう。
転職エージェントのメリットは、以下のような点にあります。
- 非公開求人を含む、幅広い求人情報の提供
- あなたの希望に合った職場の厳選紹介
- 面接対策や条件交渉のサポート
- 両立支援制度の詳細な情報提供
転職エージェントを選ぶ際は、看護師専門の転職エージェントを利用することをおすすめします。一般の転職エージェントと比べて、看護師の職場環境や雇用条件について詳しい知識を持っているためです。
特に大手の看護師転職エージェントでは、シングルマザー看護師の転職支援実績も豊富です。担当者に「シングルマザーなので両立できる環境を探している」と最初に伝えることで、より適切なサポートを受けることができます。
1-3.面接時の条件交渉と両立支援制度の確認ポイント
面接では、就業条件や両立支援制度について、具体的に確認することが重要です。遠慮して聞きそびれてしまうと、入職後にミスマッチが生じる原因となってしまいます。
具体的な確認ポイントをご紹介します。まず、基本的な労働条件として、勤務時間や休日、夜勤の有無などは必ず確認しましょう。その上で、シングルマザーとして特に重要な以下の点について、詳しく質問していきます。
【両立支援制度について、特に確認すべきポイント】
育児に関する制度面では、育児短時間勤務の利用可能期間や、子の看護休暇の日数などを具体的に確認します。また、保育園の送り迎えに対応できるよう、始業・終業時刻の調整が可能かどうかも重要なポイントです。
次に、急な対応が必要な場合のバックアップ体制について確認します。子どもの発熱など予期せぬ事態が起きた際の休暇取得のルールや、同僚とのフォロー体制がどうなっているかを把握しておく必要があります。
【面接での印象も大切なポイント】
上記の制度面の確認と同時に、面接担当者の受け答えから、職場の雰囲気も把握しましょう。特に、子育て中の職員への理解度や、実際の両立支援の運用状況などは、担当者の話し方や表情からも読み取ることができます。
1-4.転職前に準備しておくべきこと
転職を成功させるためには、事前の準備が何より大切です。具体的には、以下の準備が必要になります。
- 保育環境の整備
- 経済面の準備
- 各種支援制度の申請手続き
それぞれの準備について詳しく見ていきましょう。
【保育環境の整備】
転職後の新しい職場に合わせて、保育園の変更が必要になる可能性もあります。保育園の空き状況や入園手続きにかかる時間なども考慮して、余裕を持って準備を進めましょう。
また、緊急時のサポート体制として、ファミリーサポートセンターへの登録や、近隣の一時保育施設の情報収集も行っておくと安心です。
【経済面の準備】
転職に伴う収入の変化に備えて、生活費の見直しや貯金の確保も重要です。特に、転職直後は各種手当の支給時期の関係で、一時的に収入が減少する可能性があることも考慮しておきましょう。
【各種支援制度の申請手続き】
また、各種支援制度の申請手続きも確認します。ひとり親家庭向けの支援制度は自治体によって異なりますので、お住まいの地域の制度を事前に調べておくことをおすすめします。
2.実例から学ぶ!シングルマザー看護師の転職成功事例
これまでご説明してきた転職のポイントを、実際の転職成功事例を通して、より具体的に見ていきましょう。ここでご紹介する事例は、私が実際に転職支援させていただいたシングルマザー看護師の方々の体験談です。
2-1.夜勤負担を軽減し収入も維持できた事例
Aさん(34歳)は、小学2年生のお子さんを育てながら、総合病院の内科病棟で働いていました。月8回の夜勤があり、子どもの送り迎えは実家の両親に頼っていましたが、両親の体調不良をきっかけに転職を決意されました。
最大の課題は、夜勤なしでも今までの収入水準を維持することでした。病棟看護師として7年のキャリアがありましたが、外来への異動では大幅な収入減が避けられない状況でした。
そこで、訪問看護ステーションへの転職を提案させていただきました。日勤のみの勤務でしたが、オンコール手当や訪問件数に応じた手当が設定されており、基本給と合わせると病棟勤務時とほぼ同等の収入を確保できました。
さらに、子どもの行事に合わせて訪問スケジュールの調整が可能という点も、Aさんの希望に合致しました。現在は子どもとの時間を確保しながら、やりがいを持って働き続けています。
2-2.子どもの急病にも対応できる職場環境を実現した事例
Bさん(39歳)は、3歳と6歳のお子さんを育てながら、救急外来で働いていました。仕事にやりがいを感じていましたが、子どもの度重なる発熱で急な欠勤が増え、職場の雰囲気が悪化していました。
「看護師を続けたいが、子どもの体調不良時の対応に困っている」というBさんの相談を受け、まずは両立支援制度が充実している病院を探すことにしました。
そして見つけたのが、同じ市内の療養型病院でした。この病院では、子どもの急な体調不良に対応できるよう、看護師同士のバックアップ体制が整っており、時短勤務制度も柔軟に運用されていました。
実際に転職後は、子どもの体調不良時も周囲の理解を得られ、安心して働き続けることができています。また、急性期病院での経験を活かし、重症度の高い患者さんのケアも任されるようになり、新たなやりがいも見出せています。
2-3.キャリアアップと両立支援を両立させた事例
Cさん(36歳)は、8歳のお子さんを育てながら、中規模病院の外来で働いていました。安定した勤務時間で働けていましたが、このまま外来看護師として働き続けることに将来への不安を感じていました。
具体的には、「子育てが落ち着いた後のキャリアビジョンが描けない」という悩みを抱えておられました。
そこで提案したのが、大手企業の健康管理室への転職です。この企業では、産業看護師としてのキャリアアップを支援する研修制度が充実しており、かつ子育て中の社員への両立支援制度も整っていました。
現在のCさんは、定時での帰宅が可能な環境で働きながら、産業看護の専門性を高める研修に参加。将来的には産業保健師の資格取得も視野に入れて、新たなキャリアを築いています。
このように、シングルマザーであっても、自分らしい働き方や新しいキャリアを見つけることは十分に可能です。大切なのは、現在の状況に合った環境を選択しつつ、将来を見据えた判断をすることです。
3.転職後も長く働き続けるために知っておくべきこと
先ほどの事例でご紹介したように、転職によって理想的な環境を手に入れることは可能です。しかし、その環境で長く働き続けるためには、職場の環境整備だけでなく、自身の周りにもしっかりとしたサポート体制を構築することが大切です。
3-1.子育て支援ネットワークの作り方
子育てをしながら看護師として働き続けるには、信頼できる支援者のネットワークを作ることが不可欠です。このネットワークは、職場の同僚だけでなく、地域社会の中にも広げていく必要があります。
まずは、お住まいの地域にある子育て支援センターに足を運んでみましょう。ここでは、同じように子育てをしている方々との出会いがあり、情報交換ができます。特に、シングルマザー向けの交流会なども開催されていることが多いため、同じ立場の方々とのつながりを作るきっかけになります。
また、子どもの習い事や学校行事なども、支援ネットワークを広げる良い機会です。保護者同士で送り迎えを分担したり、急な残業時に子どもを預かってもらえるような関係性を築いていくことができます。
3-2.緊急時のバックアップ体制の構築方法
子どもの急な体調不良など、予期せぬ事態はいつでも起こりうるものです。そのような時に慌てないよう、複数のバックアップ体制を整えておくことが重要です。
具体的には、以下のような体制を段階的に構築していきましょう。
第一段階として、ファミリーサポートセンターへの登録があります。これは地域の支援者と支援を受けたい人をマッチングするシステムで、事前に面談を行い、信頼関係を築いた上で援助を受けることができます。
第二段階では、近隣の病児保育施設や一時保育施設の利用登録を済ませておきます。利用には事前登録が必要な施設が多いため、必要になってから慌てることのないよう、あらかじめ手続きを済ませておくことが大切です。
さらに、民間のベビーシッターサービスなども、緊急時の選択肢として検討しておくと安心です。料金は比較的高めですが、急な依頼にも対応してもらえる可能性が高いため、最終的な保険として持っておくと良いでしょう。
3-3.キャリアプランの立て方とスキルアップ戦略
子育てが落ち着いてきたら、将来を見据えたキャリアプランを立てることも大切です。シングルマザーだからこそ、長期的な視点でキャリアを考える必要があります。
まず、現在の職場でどのようなキャリアパスが用意されているのかを確認しましょう。多くの医療機関では、認定看護師や専門看護師などの資格取得支援制度を設けています。子育ての状況を考慮しながら、これらの制度を活用していく計画を立てることができます。
また、e-ラーニングや通信教育を利用したスキルアップも有効な選択肢です。子育てのスケジュールに合わせて学習を進められるため、無理のない形で専門性を高めていくことができます。
特におすすめなのが、現在の専門分野に関連する資格の取得です。たとえば、訪問看護に携わっている方であれば在宅ケア認定看護師、企業の健康管理室で働いている方であれば産業保健師の資格など、将来のステップアップにつながる資格を計画的に取得していきましょう。
4.シングルマザー看護師が知っておくべき支援制度と活用法
ここまで様々な観点からシングルマザー看護師の転職についてお伝えしてきましたが、実は意外と知られていない支援制度がたくさんあります。これらの制度をうまく活用することで、より安定した働き方を実現できます。
4-1.行政の支援制度とその利用方法
シングルマザーの看護師さんが利用できる行政の支援制度は、実はとても充実しています。特に重要な制度として、以下の3つがあります。
- ひとり親家庭等日常生活支援事業
- 母子家庭等就業・自立支援センター
- 高等職業訓練促進給付金制度
それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
【ひとり親家庭等日常生活支援事業】
中でも特に重要なのが、ひとり親家庭等日常生活支援事業です。
これは、残業や休日出勤などで一時的に子育ての支援が必要になった際に、市区町村が家庭生活支援員を派遣してくれる制度です。
利用料金は所得に応じて決められており、生活保護世帯の場合は無料で利用することができます。
【母子家庭等就業・自立支援センター】
また、母子家庭等就業・自立支援センターでは、就業相談から職業紹介まで、一貫したサポートを受けることができます。
看護師としての転職活動においても、履歴書の書き方や面接対策など、実践的なアドバイスをもらえるので、積極的に活用することをおすすめします。
【高等職業訓練促進給付金制度】
さらに、高等職業訓練促進給付金制度も見逃せません。
これは、看護師の資格を持っている方が、より上位の資格(例:保健師や助産師)の取得を目指す場合に利用できる制度です。
修学期間中の生活費の支援を受けることができ、キャリアアップを目指す際の強い味方となります。
4-2.病院・施設独自の支援制度の活用ポイント
医療機関によって、独自の両立支援制度を設けているところが増えています。これらの制度は、一般的な育児支援制度に加えて、シングルマザーの方々特有の課題に対応したものも多くあります。
例えば、子どもの学校行事参加のための特別休暇制度や、急な残業が発生した際の院内保育延長利用制度などが挙げられます。特に大規模な病院では、このような独自の支援制度が充実していることが多いです。
ただし、制度があっても、実際の運用面で課題がある場合もあります。そのため、面接時には以下のような点を具体的に確認することが重要です。
まず、制度の利用実績について質問してみましょう。例えば、「実際に制度を利用している職員は何人くらいいますか?」「どのような場面で利用されていますか?」といった具体的な質問をすることで、制度が形骸化していないかどうかを判断することができます。
また、制度利用に関する職場の雰囲気も重要なポイントです。「子育て中の職員への配慮」を謳っていても、実際には制度を利用しづらい雰囲気があるケースも見受けられます。面接担当者の受け答えや、可能であれば実際の職場見学を通じて、職場の雰囲気を確認することをおすすめします。
4-3.金銭面でのサポート制度と申請のコツ
シングルマザーの看護師さんを支援する制度の中でも、特に見逃せないのが金銭面でのサポート制度です。転職に伴う一時的な収入の変動や、子育てにかかる費用の負担を軽減するために、これらの制度を上手に活用していきましょう。
まず、児童扶養手当は基本的な支援制度として押さえておく必要があります。収入が一定基準以下の場合、子どもが18歳になるまで受給することができます。特に転職後は収入が変動する可能性があるため、必ず市区町村の窓口で相談するようにしましょう。
また、医療費の負担を軽減できるひとり親家庭等医療費助成制度も、多くの自治体で実施されています。子どもの急な病気による受診も経済的な心配なく行えるため、安心して働き続けるための大きな支えとなります。
これらの制度を利用する際の重要なポイントは、「早め早めの準備」です。多くの制度は申請から給付開始までに時間がかかります。また、年度途中での申請や、収入の変動があった場合の変更手続きなども必要になってきます。
特に注意が必要なのが、住所変更に伴う手続きです。転職で引っ越しが必要になった場合、転出届と転入届の提出タイミングによって、手当の受給に影響が出る可能性があります。この場合は、事前に両方の自治体の窓口に相談し、適切な手続きの方法と時期を確認しておくことをおすすめします。
おわりに
シングルマザーとして看護師を続けていくことは、確かに簡単ではありません。しかし、適切な環境と支援があれば、子育てと両立しながら、やりがいを持って働き続けることは十分に可能です。
私自身、転職エージェントとして多くのシングルマザー看護師の方々の転職をサポートしてきましたが、その経験を通じて強く感じるのは、「諦めないことの大切さ」です。現在の環境に課題を感じていても、必ず道は開けます。
この記事でご紹介した方法や支援制度を参考に、ご自身に合った働き方を見つけていただければ嬉しく思います。そして何より、あなたの看護師としての経験とスキルは、かけがえのない財産です。
新しい環境で、その経験とスキルを活かしながら、子どもとの時間も大切にできる働き方を実現してください。きっと、あなたらしい素晴らしい看護師としての道が見つかるはずです。
転職についてお悩みの際は、ぜひ専門家に相談することをおすすめします。あなたの一歩を、私たちがしっかりとサポートさせていただきます。
コメントを残す