看護師が給料上がらない理由│現場経験者が年収アップの方法を解説

看護師が給料上がらない理由│現場経験者が年収アップの方法を解説

この記事をご覧のあなたは、「頑張っているのに給料が上がらない…」と感じていらっしゃると思います。

私は総合病院で10年間看護師として働いた後、看護師専門の転職エージェントとして5年間、年間100名以上の看護師さんのキャリア相談に携わってきました。その経験から、給料に関する悩みを抱える看護師さんが非常に多いことを実感しています。

特に印象的だったのは、夜勤を含めて一生懸命働いているにもかかわらず、なかなか収入が増えないことへの不安や焦りを感じている方々の声でした。

この記事では、看護師の給料が上がらない理由と、具体的な年収アップの方法についてご説明します。転職エージェントとして数多くの看護師さんの転職をサポートしてきた経験から、実践的なアドバイスをお伝えできればと思います。

1.給料が上がらない3つの理由と年収アップの具体的な方法

看護師の給料が上がらない理由は、大きく分けて3つあります。経験年数を重ねても思うように収入が増えないのは、実はこれらの要因が関係しているのです。

1-1.給料が上がらない理由1:画一的な給与体系と昇給の限界

多くの医療機関では、年功序列型の画一的な給与体系を採用しています。つまり、経験年数に応じて少しずつ基本給が上がっていく仕組みです。

しかし、この仕組みには大きな問題があります。それは、昇給の上限が比較的早い段階で訪れてしまうことです。一般的な医療機関では、看護師経験10年程度で昇給がほぼ頭打ちになってしまいます。

たとえば、入職5年目で基本給が28万円の場合、10年目になっても30万円程度にしかならないケースが多いのです。これは、看護の技術や経験が向上しても、給与に十分反映されないということを意味します。

実際に私が転職支援をしてきた看護師さんからも、「10年以上働いているのに、ここ数年はほとんど給料が変わらない」という声をよく耳にします。特に中堅看護師の方々にとって、この画一的な給与体系が大きな悩みの種となっているのが現状です。

なお、2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを目的とした「ベースアップ評価料」が新設され、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが予定されています(厚生労働省発表)。

しかし、日本看護協会の最新調査によると、勤続10年の看護師(31~32歳、非管理職)の平均税込給与総額は326,675円と、依然として多くの看護師さんが期待するレベルには達していないのが現状です。

また、病院と診療所では平均年収に100万円以上の差があるなど、医療機関による待遇の差は広がる一方(医療経済実態調査より)です。

より良い環境を選んで移動する看護師さんが増えているのも、このような背景があるからです。次の章では、このような給与が上がらない理由をさらに詳しく見ていきましょう。

1-2.給料が上がらない理由2:評価基準の不透明さ

画一的な給与体系に加えて、もう一つ大きな問題があります。それは評価基準が不透明なことです。

看護師の仕事は、患者さんへの直接的なケアだけでなく、様々な専門的なスキルが必要とされます。しかし、多くの医療機関では、これらのスキルや努力を適切に評価する基準が明確になっていません。

@/例えば、夜勤を積極的に引き受けている方と、日勤のみの方で給与に大きな差がつかないケースもあります。また、後輩の指導に熱心に取り組んでいても、それが評価や給与に反映されにくいのが現状です。

私が転職支援をする中でも、「頑張りが評価されない」「何を頑張れば給料が上がるのかわからない」という声を多く耳にしてきました。

1-3.給料が上がらない理由3:管理職ポストの少なさ

給料アップの大きなチャンスとなる管理職ポストにも課題があります。それは、ポストの数が極めて限られているということです。

一般的な病棟では、看護師長は1名、副看護師長でも2〜3名程度しかいません。そのため、いくら能力や意欲があっても、管理職として評価されるチャンスが少ないのです。

また、管理職になれたとしても、その責任の重さに比べて給与の上昇幅が小さいケースも少なくありません。実際に私が関わった看護師さんの中には、「管理職になって責任は増えたのに、給料はそれほど変わらない」と悩む方もいました。

1-4.年収アップの具体的な4つの方法

ここまで給料が上がらない理由をご説明してきましたが、決して悲観する必要はありません。私の経験から、確実に年収アップを実現できる方法があるからです。

以下の4つの方法が効果的です。

  • 専門・認定看護師の資格取得を目指す
  • 夜勤手当の高い病院への転職を検討する
  • 給与体系の異なる施設を探す
  • より待遇の良い地域への転職を考える

それぞれ詳しく解説していきましょう。

【専門・認定看護師の資格取得を目指す】
資格を取得することで、より専門的な役割を担えるようになり、給与アップにつながります。特に、緩和ケアや感染管理などの分野では、専門性の高いスキルが評価されやすい傾向にあります。

【夜勤手当の高い病院への転職を検討する】
夜勤手当は病院によって大きく差があります。私の経験では、夜勤1回あたりの手当が2万円以上の差がつくケースもありました。年間で考えると、かなりの収入差になります。

【給与体系の異なる施設を探す】
訪問看護ステーションや健診センターなど、病院以外の施設では、能力や実績に応じた給与体系を採用しているところも増えています。実際に私がサポートした方の中には、訪問看護への転職で年収が100万円以上アップした例もあります。

【より待遇の良い地域への転職を考える】
都市部と地方では給与水準に差があります。また、同じ地域でも、病院によって待遇は大きく異なります。適切な情報収集と比較検討が重要です。

特に重要なのは、これらの選択肢を組み合わせることです。例えば、専門看護師の資格を取得しながら、より待遇の良い病院への転職を目指すといった方法です。

ただし、給与だけでなく、職場環境や将来性なども含めて総合的に判断することが大切です。次の章では、給与以外の面も含めた職場選びのポイントについてご説明していきます。

2.給料以外の待遇も含めた総合的な職場評価の重要性

先ほど年収アップの具体的な方法をご紹介しましたが、実は給料だけで職場を選ぶのは危険です。私がこれまでサポートしてきた看護師さんの経験から、給与以外の要素も含めて総合的に職場を評価することが、長期的な満足度につながることが分かっています。

2-1.給与だけでは測れない職場の価値とは

給与は確かに重要な要素ですが、それ以外にも私たちの働き方に大きく影響する要素があります。

実際に私が転職支援をした看護師さんの例を挙げてみましょう。以前、月給は5万円ほど下がりましたが、夜勤がなくなったことで生活にゆとりが生まれ、「こんなに充実した毎日が送れるとは思わなかった」と喜ばれた方がいました

職場の価値を決める重要な要素として、以下のようなものが挙げられます。

まず、看護体制です。7対1看護体制が取られていても、実際の業務量は病院によって大きく異なります。受け持ち患者数や看護補助者の配置状況によって、一人あたりの負担は変わってきます。

次に、休暇の取得のしやすさです。年間休日数が同じでも、希望休が取りやすい職場と取りにくい職場では、実際の生活の質が大きく変わってきます。産休・育休の取得実績や、復帰後の時短勤務制度の充実度なども重要なポイントです。

さらに、教育体制も見逃せません。新しい医療技術の習得機会や、資格取得支援制度の有無は、長期的なキャリア形成に大きく影響します。

2-2.自分の価値を正当に評価してくれる環境を見つけるには

では、こうした職場の価値を見極めるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

まず大切なのは、自分自身の価値観を明確にすることです。「給与は少し下がっても、学会参加や資格取得がサポートされる環境が良い」「残業は少なくても、じっくりと患者さんと向き合える職場が良い」など、あなたにとって何が大切かを整理してみましょう

次に、その価値観に合った職場を探すための情報収集が重要です。医療機関の求人情報だけでなく、実際にそこで働いている看護師さんの声を聞くことができれば理想的です。

私の経験では、面接時に以下のような点を確認することをお勧めしています。

  • 新人教育やキャリアアップ支援の具体的な内容
  • 残業時間の実態と時間外手当の支給状況
  • 有給休暇の取得率や、希望休の調整方法
  • 子育て中の看護師の働き方や支援制度の利用状況

これらの情報を総合的に判断することで、あなたの価値観に合った、そして本当の意味であなたの価値を認めてくれる職場が見つかるはずです。次の章では、そうした環境を見つけるための具体的な方法として、転職という選択肢についてお話ししていきます。

3.将来のキャリアプランを見据えた転職という選択肢

職場の価値を総合的に判断した結果、今の環境では将来に不安を感じる場合、転職は有効な選択肢の一つとなります。実際に、私がサポートしてきた多くの看護師さんが、転職を通じてより良い環境で働けるようになっています。

3-1.転職で実現できる3つの可能性

看護師の転職には、大きく分けて3つの可能性があります。

  • キャリアアップの実現
  • ライフスタイルに合った働き方の実現
  • 適切な評価と待遇の実現

それぞれ詳しく見ていきましょう。

【キャリアアップの実現】
例えば、一般病棟から希望していた救急外来への異動や、訪問看護への転向など、やりたかった看護を実践できる場所に移ることができます。私がサポートした看護師さんの中には、念願だった緩和ケア病棟に転職し、より専門的なケアに携われるようになった方もいます。

【ライフスタイルに合った働き方の実現】
結婚や出産、家族の介護など、生活環境の変化に応じて働き方を変えることができます。夜勤のない病院や日勤のみのクリニックに転職することで、家庭と仕事の両立を実現した看護師さんは数多くいらっしゃいます。

【適切な評価と待遇の実現】
実力や経験に見合った待遇を得られることはもちろん、自分の看護観や価値観に合った職場で働くことができます。実際に、前職では評価されなかった専門性が新しい職場で高く評価され、やりがいを感じながら働いている方も大勢います。

3-2.転職成功のための具体的なステップ

転職を成功させるためには、計画的に準備を進めることが重要です。私の経験から、以下のようなステップを踏むことをお勧めしています。

まず第一に、自己分析をしっかり行うことです。今の職場の何に不満を感じているのか、どんな環境で働きたいのか、将来のキャリアをどう描いているのかを、具体的に整理していきます。

次に、市場調査を行います。希望する職場や職種の求人状況、給与水準、必要なスキルなどを詳しく調べます。この際、転職サイトだけでなく、転職エージェントに相談するのも効果的です。エージェントを通じて、求人情報には載っていない職場の実態や、面接のポイントなども知ることができます。

そして、具体的な転職活動に入る前に、必要なスキルの準備を行います。例えば、希望する分野で求められる資格の取得や、経験が必要なケアの習得などです。私がサポートした看護師さんの中には、転職までの半年間で救急看護認定看護師の資格を取得し、希望していた救命救急センターへの転職を実現した方もいます

これらの準備が整ってから、実際の転職活動をスタートさせます。焦って早急な転職を決めてしまうと、かえって状況が悪化するケースもありますので、慎重に進めることが大切です。

3-3.転職で年収アップを実現した3つの事例

具体的な転職成功例をご紹介することで、転職による可能性をより実感していただけると思います。これから紹介する3つの事例は、私が実際にサポートさせていただいた看護師さんの実例です。

まず1つ目は、一般病棟から訪問看護ステーションへ転職された方の事例です。病棟での10年の経験を評価され、基本給は若干下がったものの、インセンティブ制度により、最終的に年収が120万円アップしました。訪問看護の場合、訪問件数に応じて収入を増やせる仕組みがあり、実力次第で収入アップの可能性が広がります。

2つ目は、地域の総合病院から大学病院の救命救急センターへ転職された方です。救急看護認定看護師の資格を活かせる環境に移ったことで、年収が80万円増加しました。専門性の高い部署では、スキルや資格が適切に評価され、給与に反映されやすい傾向があります。

3つ目は、夜勤の多い急性期病院から健診センターへ転職された方の例です。一見すると夜勤手当がなくなるため、収入は下がるように思えます。しかし、この方の場合、残業がほとんどなくなった分、資格取得の時間が確保でき、保健師の資格を取得。それにより時給が上がり、最終的に年収は50万円のアップを実現できました

これらの事例に共通するのは、単に「給料の高い職場に移る」のではなく、自分の強みや希望する働き方を活かせる環境に移ることで、結果的に収入アップにつながっているという点です。

まとめ

ここまで、看護師の給料が上がらない理由や、年収アップの具体的な方法についてお話ししてきました。改めて重要なポイントを整理しておきましょう。

給料が上がらない主な理由は、画一的な給与体系、評価基準の不透明さ、管理職ポストの少なさにあります。しかし、これらは解決不可能な問題ではありません。

年収アップを実現するためには、以下の視点が重要です。

  • 専門性を高め、資格取得にチャレンジすること
  • 給与体系の異なる施設も視野に入れること
  • 夜勤手当など、各種手当の違いにも注目すること

そして何より重要なのは、給与だけでなく、職場環境や将来性も含めて総合的に判断することです。実際に、私がサポートしてきた看護師さんの多くは、この視点を大切にすることで、よりやりがいのある環境で、適切な評価と待遇を得られるようになっています。

看護師の皆さんには、豊富な選択肢があります。ぜひ自分の価値観や希望する働き方に合った環境を見つけ、充実したキャリアを築いていっていただければと思います。

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